小さな里づくりのこころみ

中央自動車道須玉ICは移住者に人気の北杜市・八ヶ岳南麓の玄関口である。わたしもかつて家族4人で東京から移住したのが北巨摩郡(現北杜市)小淵沢町だった。それは長野オリンピックの前の年で、いまは30代半ばの子育て中の娘が小淵沢小学校3年生時の9月から編入した頃のことである。

3年後には北杜市大泉町西井出の一戸建てで20数年間暮らすこととなった。家族は東京に戻りわたしは単身者として。その間、北杜市内を中心に1000件を超える不動産売買の契約決済に携わってきたのだが、わたしにとっても人生の活躍期に八ヶ岳南麓で過ごせたことは大きかったといえる。

さて、八ヶ岳南麓の玄関口である須玉ICを出て、清里ライン(国道141号線、旧佐久甲州街道)から一本入った集落が地区である。清里や大泉などの別荘地に続く八ヶ岳の急峻な坂道を上る手前、標高620m前後の南麓にあっては標高のやや低い場所である。東に須玉川、西に田園が広がる肥沃な土地柄で南西方向には甲斐駒ヶ岳や鳳凰三山などの峰々が連なる。

統計によれば人口507人、210世帯、65歳以上は全人口の約35%という(2020年国勢調査)。八ヶ岳南麓の静かな農山村集落である。

この小さな里界隈で空き家を活用した方々が少しずつ増えている。長屋門のある豪壮な民家はカフェと住まいに、その北隣はセカンドハウスと陶芸工房に。その平屋はわたしが10数年前に不動産売買にかかわった方の再販でもあった。

空き家を活用した移住定住者対策の取り組みは何といっても地元の方々と都会人の熱い思いに支えられている。そこに行政の支援策が加わることで少しずつその地域が活性化されんことを願っている。

長屋門のある家

小ぶりな平屋